テレワーク導入にあたっての労務管理について
新型コロナウイルスをきっかけに、テレワークの導入が検討されるようになりました。
緊急事態宣言を受け、急遽テレワークを導入することになった企業も少なくないのではないでしょうか。2020年4月から本日までおおよそ3か月間、継続的にテレワークを実施している企業もあるでしょうし、業務体系的になかなか踏み出せない企業もあるでしょう。
テレワークでは通常のオフィス勤務とは異なる労働時間の把握や、勤怠管理が必要となります。本記事ではテレワーク導入に際しての労務管理について取り上げていきます。
テレワーク導入に向けて、まずテレワーク可能な業務の抽出が必要です。しかしながら、一口にテレワークといっても、製造業や小売業などの接客業務ではテレワークへの移行は困難です。ロボット化による完全自動化が実現すれば、自宅にネットワーク環境さえあればオフィスでも自宅でもシステムをマシン制御することができ、接客業等もテレワークへ移行することが可能になりますが、中小企業ではそこまでのシステム化が進んでいないのが現状です。しかし、一部をWebカメラとモニターを使用した接客に切り替えることや、業務の見直しを行うことで一部在宅勤務を取り入れることができます。
テレワーク導入検討にあたり、正社員のみをテレワークの対象として、非正規社員を対象外とする扱いは注意すべき点の一つです。このような扱いはパートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法に抵触する恐れがあります。雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が必要となりますのでご注意ください。
【参考】
テレワークではオフィス以外の場所が職場となるわけですから、職場環境を整える助けが必要となります。自宅のネット環境や電話の通信料・通話料等の一部を会社が補助する必要もあるでしょう。
【参考】
また、自宅であっても使用者としての安全配慮義務(労働契約法第5条)は免除されないことにも注意が必要です。
※労働契約法第5条…「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をするものとする。」 と定められています。
テレワーク勤務を導入する場合、就業規則に次のことを明記する必要があります。
・テレワーク勤務を命じることに関する規定
・テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
・通信費などの負担に関する規定
【参考】
厚生労働省 テレワークモデル就業規則~作成の手引き~
・フレックスタイム制の併用
フレックスタイム制とは、清算期間(3か月以内)の労働時間の総量の範囲内で従業員が日々の始業・終業時刻を自身で決定して働く事ができる制度です。導入する場合には、就業規則でフレックスタイム制について規定をし、労使協定を締結しなければいけません。
テレワークでもオフィスでの勤務と同様に、労働基準法上の労働時間・休憩・休日等が適用されます。しかし、在宅で勤務している場合、家事や育児等で業務を一時的に中断する時間「中抜け時間」が生じる場合があります。こういった中抜けに関して、上記フレックス制を併用すると従業員の労働時間に対する自由度がたかまり、自律的な働き方につなげることができます。
・人事評価について
テレワークでは業務遂行のプロセスを把握することが困難になるため、人事評価においては目標管理制度に基づく成果主義への移行が必要となります。管理職の評価に対する考え方の転換や評価スキルの工場がより一層求められるようになるでしょう。
テレワーク導入にあたり、情報セキュリティに関する対策も見直す必要があります。資料の持ち出しの禁止や公衆無線LANの使用を禁止するなどといった、情報セキュリティに関するマニュアル作成や服務規律を定めることも重要事項といえるでしょう。
中小企業では全社一斉にテレワークを導入するのではなく、週一日からはじめ、徐々に頻度を増やしていくなどといった導入がスムーズです。
厚生労働省から提供されているテレワークに関する資料も大変役立ちますので、導入前に確認しておくことをお勧めします。
【参考】
厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト